みなさんこんにちは。鹿児島でオンライン家庭教師をしています、宮下です。
「読書は読解力アップに有効です」というフレーズ、書店の児童書コーナーなどでよく目にしますね。また小学校などでは“読書の時間”というものを設けて、子どもに本が読むようを推奨しているところも多くあります。しかし、本当に読書は読解力アップに有効なのでしょうか。
今年(令和3年)は大学入試のセンター試験から共通テストへと変わり、どの教科でも文章が比較的長くなったり、読解力を必要とする問題が増えました。このタイミングで読解力について一度考えてみましょう。
①そもそも読解力とは
OECD(経済協力開発機構)というヨーロッパやアメリカを中心とした34か国の先進国によって構成された国際的な経済機構が行っている、15歳児の学習到達度調査によると、読解力とは文章を理解、利用、熟考する能力だと言われています。つまり、
- 文章から情報を取り出して分かることができる力
- 文章から得た情報から自分の考えを発信することができる力
- 文章の情報について考えを深めることができる力
この3つ力のことを読解力と定義することができるかと思います。
②本を読む習慣=読解力アップ?
「国語ができません。本を読む習慣が無いからでしょうか?」というようなご相談を保護者の方から頂いたことがあります。そうでもあり、そうでも無いと言えるご相談なのですが(どっちつかずですみません)どういうことか説明すると、まず、文字を読む習慣が無い子に文章の内容を理解しなさいと言ってもできるわけがないのです。しかし、子供は学校で文章を読みますよね。国語だけではなく、他の教科でもほぼ毎日、必ず文章から情報を読み取っているのです。つまり、文章を読む習慣が無いわけではありません。そのため、本を読む習慣がないから国語ができない、というのは間違いであると言えます。実際に1年間で本を1冊も読まないが、国語は満点取れるという子も多くいるからです。では、何が起こっているのでしょうか。
③読んでいるのに読んでいない
文章から意味が取れない子というのは、文章を理解しながら読むのではなく、文字を追うことに必死になっている可能性があります。目を滑らせるだけ、「あ」なら「あ」という音だけが頭の中を通り過ぎて行ってしまっているということです。読んでいるのに読んでいないのです。例えば・・・「綺麗な赤い花が道端に咲いている」という文章を読んで、道端や赤い花、綺麗な花が想像できているのか、ただ字の上に目線を送っているのかで、文章の意味を理解できているのかできていないのかが変わってきます。しかし、これは周りの人間が見ても全く同じことをしているように見えるため、確かめる方法がありません。読書している人の頭の中を覗くことはできないのです。そして、読んでいる本人も読めていないことに気がつかないまま時間が過ぎて行ってしまう、これが最大の悲劇です。
④本当に有効な読解力を上げる方法 ①要約
読書をするだけでは実際に読解力が上がるかわからないとなれば、どうするか。一つ目のおすすめは要約です。要約とは文章を読んで、大切なところを抜き出して短い文章にまとめることです。初めは、元の文章とほぼ変わらない、もしくは大切でない部分を抜き出すなどの問題が出てくるかと思いますが、要約に正解はありません。どうしてその部分を抜き出して書いたのか、どういうところが大切だと思ったのか紐解いてあげましょう。根気強く続けて、慣れてきたら要約する文章を短くしたり、使用する語句を指定して書いてもらうなども有効だと思います。なぜ要約がいいのかというと、大切なところを抜き出すために全体の流れを理解する必要がある、そしてそれを元の文章を読んだことがない人が読んでも分かる形に再構築することにより、自分の理解に間違いはないか、それをもとに書いた文章に間違いはないかチェックができるようになり、さらに考えを深めることに繋がるためです。
⑤本当に有効な読解力を上げる方法②発問する
文章を書く機会がまだあまりない小学校低学年やもともと文章を書くことに苦手を感じている子に有効なのは発問です。発問とはその名の通り、質問をすることを指すのですが、例えば文章や本を読んでもらう前に、「これはどこの国のお話かな?」「この本の主人公はどんなことをするのかな?」「読み終わった後にもう一度質問するね」など質問を投げかけておきます。そこから本を読んでもらいます。読み終わった後に、同じ質問をすることで投げかけていた質問に対してはよく理解しながら読むことができるようになります。読む前から、読み終わった後質問されるということがわかっているため、答えを探そうと文章をくまなく読むようになります。その質問の内容を少しずつ変えて出すことで、文章から情報を得る練習になります。ここができるようになれば、要約のステップへと進められるかと思います。
⑥まとめ
読書をしているだけでは読解力が上がるわけではない、だけでなくそもそも文章が読めているのかもわからないということはお分かりいただけましたでしょうか。読解力を上げるために必要なのは本を買い与えることではなく、アウトプットの環境を作ってあげることが大切です。方法は要約、発問など、文章を読んだ先にアウトプットがあるということを子供に示してから大人が手助けをしながら読書してもらうとできるようになるということでした。現代は動画やゲームなど子供心をくすぐるもので溢れていますが、文字から自分の想像の世界を自由に広げることができる読書の魅力にも、子供時代ならではの楽しみ方だと思いますので、ぜひ触れて欲しいと思います。